抽斗の釘

小説、散文、文章、短編

短編

夕飯の支度が済み、夫の帰りを待つ間にリンゴを切っておこうと思った。 包丁を入れ実を割ると、種と芯の部分に白い綿のようなものが生えていた。黴である。しかし今からスーパーに戻って交換を頼む気にもなれない。包んでいたビニール袋に手早く戻し、口をき…

夜のどんどん

虎の天使が腕を組んで見下ろしてきます。わたしは眠れない体をごろごろ動かしながら、時計のコチコチを聞いています。目を閉じると、黒鬼が、どろどろ動きます。腕が、足が固まってきました。さあ、夜のどんどんです。 わたしは家族と、白のハイエースに乗っ…