霧雨の向こうから水銀のひと塊が音もなくすり抜けてくる。 山間の車道をなめらかになぞりながら、それはやがて新緑の下へと滑り込んだ。そのさい梢が傘となって霧雨が途切れ、水銀は正体をあらわした。旧型のマーチボレロである。 ボレロは濡れて光るアスフ…
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