抽斗の釘

小説、散文、文章、短編

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

眠りの国

先輩は仕事中に時々眠っています。キーボードに手を置きながら、こくこくと。 先輩は会議中でも眠ってしまいます。腕を組んで、目をつむって考えるふりをして、そのまま、こくこくと。 ある日、わたしは通勤の電車で先輩と乗り合わせました。座席に隣り合っ…

相合傘

パタパタと、傘を鳴らす雨の音が続く。傘のなか、わたしの横には、夜の街に映える彼女の白く整った顔があった。相合傘。‥その白い顔に映える濃いめの化粧。口紅。美人だな、とわたしは思う。小さな折り畳み傘からは、彼女の黒革の上着がはみ出ており、雨に肩…